塗床材とは?合成樹脂系の床材の種類と特徴をわかりやすく解説

工場や生産現場、事務所などを建設する際に、塗床材の選択は非常に重要です。適切な塗床材を選ばなければ、​​床に凹凸が生じたり、滑りやすくなる可能性があります。

​​この記事では、塗床の目的や合成樹脂系床材の種類・特徴をわかりやすく解説します。また、塗床業者を選ぶ際のポイントも紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。

塗床とは?

塗床(ぬりゆか)とは、建築や住宅、産業施設などの床面に、特定の塗料やコーティングを施して仕上げることです。ここでは、塗床の目的と種類について解説します。

塗床の目的

塗床の主な目的は、次の6つです。

  • 摩耗や腐食からコンクリートを保護する
  • 発塵を防止する
  • 耐荷重性を強化する
  • 作業効率を向上する
  • 環境や用途に応じた床を作る
  • 美観を高める

それぞれの目的について解説します。

摩耗や腐食からコンクリートを保護する

コンクリートは歩行や機器の通行による摩耗、酸性薬剤、油脂などに弱い素材です。

塗床を施すことでコンクリートの表面に層を形成し、摩耗や薬品などからコンクリートを保護することができます。工場や倉庫、駐車場、商業施設などの床面は、基本的に塗床が施されています。

また、塗床は酸性薬剤や油脂からコンクリートを保護する効果も期待できます。特に、工業施設や食品加工場といった環境では、化学物質が漏れたりこぼれたりすることにより、コンクリートを劣化させる可能性があります。塗床は床面の耐久性を向上させ、コンクリートの劣化を防ぐ役割を果たしてくれるのです。

発塵を防止する

塗床は、発塵(はつじん)の防止にも役立ちます。発塵の防止は、生産現場において非常に重要です。下地コンクリートが露出している状態だと、表面から微細な粉塵が放散し、環境や設備に悪影響を及ぼす可能性があります。

例えば、食品工場や製薬工場などで発塵が起こると、製品の品質が低下するだけでなく、異物混入のリスクが高まり、社会的な信用を​​大きく損なってしまう可能性があります。このような事態を回避するために、塗床による防塵塗装が非常に重要です。

耐荷重性を強化する

耐荷重性を強化することも、塗床の重要な目的の一つです。工場や倉庫、物流センターといった重い機器の移動が頻繁に行われる場所では、塗床の施工によって耐荷重性を向上させることが重要となります。

耐荷重性が向上することで床の耐久年数が延び、修復や交換の頻度・コストを抑えることが可能です。また、作業現場での安全性も向上し、事故や怪我のリスクを軽減させることにもつながります。

作業効率を向上する

塗床によるエリアの色分けは、作業効率の向上に寄与する可能性があります。実際に、製造工場や倉庫などでは、異なる作業エリアを塗床で色分けすることが一般的です。

作業エリアごとに色分けがされていると、作業員は床の色を基に、製品の配置や必要な作業を迅速に行うことができます。その結果、作業プロセスがスムーズに進行し、生産性の向上が期待できるでしょう。

環境や用途に応じた床を作る

塗床には、環境や用途にあわせた床を作るという目的もあります。例えば、クリーンルームでは微粒子の発生を最小限に抑える必要があるため、床材に帯電防止性や導電性を持たせなければなりません。これは、帯電防止性や導電性がないと静電気が発生し、製品に悪影響を及ぼす可能性があるためです。

また、厨房や食品加工場では、耐熱水性や防水性が必要です。このように、環境や用途に応じて床を設計・施行することは、生産の現場においては重要なのです。

美観を高める

下地コンクリートが剥き出しの状態だと、見た目が損なわれることがありますが、塗床の施工によって美観を向上させる効果が期待できます。

具体的には、床が美しく整然としていると、取引先の方や工場見学に来た方など、外部の人に好印象を与えることができます。信頼性や品質に対するイメージが向上し、ブランディングの強化につながる可能性もあるでしょう。

塗床の種類

塗床には、主に「無機系塗床」「有機系(合成樹脂系)塗床」の2種類があり、それぞれが異なる特徴を持っています。

特徴 無機系塗床 有機系塗床
耐久性 高い 一般的には低い
耐薬品性 低い 高い
耐摩耗性 高い 一般的には低い
臭気 ほとんどなし 一般的にはあり
防水性 低い 高い
見た目 一般的には無機的で堅い 一般的には柔軟で光沢がある
染色性 限定的 豊富
耐紫外線性 一般的には高い 一般的には低い
膨れ 膨れにくい 膨れる可能性がある
利用用途 倉庫や工場、駐車場など 食品工場や精密機械工場、クリーンルームなど

ここでは、それぞれの特徴について詳しく解説します。

無機系塗床

無機系塗床は高い耐久性と耐衝撃性を備えており、重い物の落下などから床を守ります。特に、工業用途や倉庫などでの利用に適しています。

無機系塗床の主成分は、コンクリートなどの無機系材料です。自然に燃えにくいため火災のリスクが低いという特性があるほか、環境にやさしいことも特徴の一つです。

また、比較的紫外線にも強く、屋内外どちらでも使用できます。

有機系(合成樹脂系)塗床

有機系(合成樹脂系)塗床とは、下地コンクリートに塗料を塗って仕上げる床材を指します。床面を均一にコーティングするため、耐久性や耐薬品性、耐摩耗性などの特性を向上させることができます。

ただし、無機系塗床に比べると、一般的に耐久性や耐摩耗性で劣ります。その一方で、薬品に強く、なめらかな表面をしているため清掃も比較的しやすいのが特徴です。

また、防塵性や防水性も高いため、食品工場、精密機械工場、クリーンルームなどで幅広く使用されています。

有機系(合成樹脂系)の床材の種類

有機系(合成樹脂系)の床材は、さらに2つの種類に分かれます。

  • 厚膜タイプ
  • 薄膜タイプ

それぞれの種類について解説します。

厚膜タイプ

厚膜タイプには、主に5つの種類があります。

  • エポキシ樹脂系塗床
  • 水性硬質ウレタン樹脂系塗床
  • 硬質ウレタン樹脂系塗床
  • ビニルエステル樹脂
  • MMA樹脂系塗床

エポキシ樹脂系塗床

エポキシ樹脂系塗床は、合成樹脂であるエポキシ樹脂を主成分とする塗床材です。高い強度と耐久性を備え、幅広い産業分野で利用されています。

エポキシ樹脂系塗床は耐摩耗性に優れており、重い機械や車両の通行に対しても十分に耐えることができます。耐薬品性も高く、化学薬品や油脂などに対しても耐性があります。ただし、紫外線にさらされると黄変する傾向があるため、屋外での使用には適していません。

主に産業施設や研究室、医療施設など、さまざまな場所で利用されています。

水性硬質ウレタン樹脂系塗床

水性硬質ウレタン樹脂系塗床は、ウレタン樹脂を主成分とする塗床材で、近年では最も広く利用される塗料の一つです。有機溶剤を使用しないため、比較的環境にやさしいとされています。

耐久性や耐摩耗性、耐薬品性に優れている一方で、施工が難しいという特徴があります。主な利用場所は食品工場や厨房、飲料工場、物流倉庫などです。

さらに、速乾性があることから、施工後のダウンタイムを最小限に抑えることができます。

硬質ウレタン樹脂系塗床

硬質ウレタン樹脂系塗床は、ウレタン樹脂を主成分とする塗床材で、耐久性や耐衝撃性に優れています。耐摩耗性も高く、重い荷物が運ばれる場所や通行量の多いエリアで利用されることが多いです。

また、耐薬品性にも優れており、化学薬品や油脂などに対しても耐性があります。ただし、湿度が高い環境では発泡の可能性があるため、クリーンルームや研究室、病院、学校などでの使用が適しているでしょう。

ビニルエステル樹脂

ビニルエステル樹脂は、高分子化合物である変性エポキシ樹脂からなる塗床材です。高強度で耐アルカリ性があるうえに、低温硬化性や耐薬品性も兼ね備えています。

エポキシ樹脂系塗床やウレタン樹脂系塗床に比べ、ビニルエステル樹脂系塗床は紫外線を浴びても変色しにくいという特徴もあります。さらに、耐汚染性にも優れており、水洗いで汚れを落とすことも可能です。

また、臭気も少なく、塗装後は数時間程度で歩行できるようになるでしょう。食品加工場はもちろん、化学工場や電子部品工場といった幅広い分野で利用されています。

MMA樹脂系塗床

MMA樹脂系塗床は、メチルメタクリレートを主成分とする塗床材で、非常に迅速な硬化特性を持っています。そのため、施工後1時間程度で使用可能となり、工事期間を短縮することが可能です。さらに、マイナス20℃の低温環境でも硬化します。

また、大腸菌などに対する抗菌性もあるため、安全性が求められる場所で利用されることが多いです。具体的な利用先としては、食品工場、飲料工場、給食センターなどがあります。さらに、耐摩耗性や耐衝撃性、防滑性にも優れており、無機酸や有機酸、アルカリにも強いという特徴があります。

薄膜タイプ

薄膜タイプには、主に次の3種類があります。

  • アクリル樹脂系塗床
  • エポキシ樹脂系塗床
  • ウレタン樹脂系塗床

アクリル樹脂系塗床

アクリル樹脂系塗床は、アクリル樹脂を主成分とする塗床材です。塗料業界で古くから使われており、最も一般的な塗床材の一つといえるでしょう。

アクリル樹脂系塗床の特徴は、優れた防塵性を備えている点です。事務所や倉庫、軽作業の工場で使われるほか、電気室や機械室などでも利用されています。反対に、耐久性や耐摩耗性、耐薬品性は比較的弱く、重い荷物を運搬するフォークリフトなどが走行する場所には適していません。

また、比較的安価で簡単に施工できる点も、アクリル樹脂系塗床の特徴です。

エポキシ樹脂系塗床

エポキシ樹脂系塗床材は、薄膜タイプでも高い耐摩耗性と耐薬品性を誇ります。そのため施工が簡単で、コテ塗りの高度な技術は必要ありません。

さらに水性であり、臭気がほとんどないという点も、エポキシ樹脂系塗床の特徴といえるでしょう。

ウレタン樹脂系塗床

ウレタン樹脂系塗床は、耐摩耗性や耐久性に優れており、塗膜の割れや剥がれも発生しにくいとされています。耐薬品性も期待でき、アルカリや塩類などの物質に侵されにくいといえるでしょう。

重量物の運搬や設置にも耐えられるため、工場や倉庫、配送センター、駐車場などで広く使用されています。

塗床業者を選定するポイント

塗床の施工は、業者に依頼するのが一般的です。ただし、塗床業者によって技術やアフターフォローなどが異なります。自社にあわない塗床業者を選定してしまうとトラブルになりかねないため、塗床業者を選ぶ際には以下のポイントを重視しましょう。

  • 丁寧な下地処理をしてくれるか
  • 丁寧にヒアリングをしてくれるか
  • 豊富な実績があるか

これらのポイントを考慮しながら適切な塗床業者を選ぶことで、満足のいく仕上がりが期待できるでしょう。それぞれのポイントについて解説します。

丁寧な下地処理をしてくれるか

塗床業者を選定する際に重要なポイントの一つは、適切な下地処理を丁寧に行ってくれるかどうかです。下地処理は、塗床や基盤の性能に大きな影響を与えるため、非常に重要となります。下地処理が不十分だと、防水性や耐久性が低下し、床面の凹凸や不均一さが目立つ可能性があります。

さらに、下地作業は一旦表面が仕上がってしまうと、その品質を確認することはほぼ不可能です。したがって、仮に手抜き工事が行われた場合、後になってひび割れなどのトラブルが発生する可能性があります。

反対に、信頼性のある業者に依頼できれば、素材の密着度を向上させ、床の耐久年数や性能が最大限に発揮されるでしょう。

ホームページなどで下地処理について詳しく解説している場合は、信頼性の高い業者である可能性が高いといえます。

丁寧にヒアリングをしてくれるか

適切な塗床業者を選ぶ際に、丁寧にヒアリングを行ってくれる業者を選ぶことも大切です。これは、施工箇所によって、求められる機能や特性が変わってくるためです。

例えば、先述したとおり、床材は種類によって特徴が異なります。自社の要望にあった床材を使用しなければ、凹凸が発生したり滑りやすくなったりするなど、再施工が必要になるかもしれません。

また、真摯に話を聞いてくれるだけでなく、「相談しやすい業者かどうか」を見極めることも重要といえます。

豊富な実績があるか

施工実績も確認して業者の選定を行いましょう。実績があるということは、専門知識と技術を積み重ねてきた証拠といえます。また、実績のある業者であれば、トラブルが発生した場合にも豊富な経験から適切に対処してくれるはずです。

ホームページなどで施工件数を紹介していたり、長い運営歴があったりすると安心です。さらに、口コミで高い評価を得ていれば、より信頼性が高い業者といえるでしょう。

適切な塗床材を選ぼう

塗床材は、コンクリートを摩耗や腐食から保護し、発塵を防止するために使用されます。塗床材によって耐久性や耐摩耗性、耐薬品性といった特性が異なるため、用途にあったものを選びましょう。

塗床業者を選ぶ際には、下地処理に力を入れているところを選ぶのがおすすめです。また、丁寧なヒアリングをしてくれるかどうかや、豊富な実績があるかという点も依頼前に確認しておきましょう。